アキス・トリコフィラ
Acis trichophylla
ヒガンバナ科アキス属
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アキス属植物は1800年にデンマークの植物学者ピーター・シューズボー(Peter Schousboe: 1766 – 1832)さんによってリューコジュウム(レウコユム,Leucojum)属と命名されましたが、1809年に英国の植物学者ソールズベリー(Richard Anthony Salisbury:1761–1829)さんがアキス属を立て、いくつかがそこへ分割されました。
1880年代になり、再びリューコジュウム属にまとめられましたが、2004年に分子系統発生的研究から、葉に幅があり、花被片に緑の模様があるリューコジュウム属の特徴を持つ2種を残して、そうではない9種がアキス属へ再分類されました。
アキス・トリコフィラはスペイン、ポルトガル、ジブラルタル海峡を隔てて対岸のモロッコなどに分布しています。
高地には自生せず、海岸の松林の砂地などで見られます。
種小名トリコフィラは、「糸状(tricho)の葉の(phylla)」という意味で、5〜20cmの松葉のように細い葉が球根から数本出て、渦巻くように地面を這い回っています。
花茎は渦巻いている葉とは関係ないようなところから、潜水艦が潜望鏡を上げるように、地面から突き出てきます。
10cm〜25cmの花茎を立て、長さ1cmほどの白色かピンクの2〜4個の釣り鐘型の花をつけます。
基本種は白い花を咲かせますが、ピンクがかった花を咲かせる品種(アキス・トリコフィラ・プルプラスケンス:Acis trokophylla f. purpurascens)も知られています。
RHS(英国王立園芸協会)ではAcis trokophylla f. purpurascensという学名ではなく、Acis trichophylla pink-flowered という園芸品種のような表記をしています。選別種という扱いのようで、分布しているところや性質や育て方は全く変わらないと考えたらいいのでしょう。
英名はspring bell(春の鐘)、lusitanica bell(ルシタニア(イベリア半島の古名)の鐘)です。
アキスという属名について命名者のソールズベリーさんはその由来を、ローマの詩人オウィディウス(Publius Ovidius Naso)の「メタモルフォセス(変身物語)」に因むとしか説明しなかったそうです。
メタモルフォセスに登場する、海の妖精ガラテアと恋に落ちた川の妖精ニュンペーの息子、青年アーキスに由来するのだろうということは分かるのですが、青年アーキスがこの植物とどのような関係にあるのか分かりません。
ブログ初出:2014/5
花色:白/ピンク
花期:春